ある滅裂

 愛してるって言ってみる。行き先のない、クソみたいな台詞を、天井に向かって。

 いつからぼくの人生は子供騙しの紙芝居なのだろう。

 まとまらない言葉を、指の隙間から溢れて落ちていくそれらを、すくおうとしてぜんぶ失ってしまう。そんな感覚。

 生まれたての頃はもっとちゃんと夢を追いたかった。

 ところが痛々しい欲望や退屈による殺害と同じくらい危険で甘美な香りに誘われて四セント五〇億光年前に破滅した何かがあった。その何かを拾うことができた奇跡に、ぼくは毎夜鎮魂歌でチリコンカーンする。祈るように。

 ふと、たくあんが食べたくなる。ああ、たくあんが食べたいなあ。子悪魔囁く。

 

 索莫の灯船。蕭殺たる希望。

 何者もこの炎の運命を390円でゴミ箱に投ぐ。因果律から抜け出して泣く泣く君は鼻をかむ。

 ジャンクションにてかき揚げを食べる。サムズアップで神に感謝すると、そばにトラックが停まった。

「兄ちゃん、乗ってきな」どうやら運ちゃんは、ぼくがヒッチハイクしていると勘違いしたらしい。しかしこれも何かの縁だと思い、お言葉に甘える。

「さくさくした羽衣に舌鼓を打ち、かぐや姫はイッてしまったの?」自己紹介がてらぼくは尋ねる。

 途端ヤバいやつを見るような目をされた。急いで訂正する。

「ごめんなさい、ちょっとお恥ずかしいものが出ちゃいまして。でも安心してください、パンツはちゃんと穿いてますから」

 車は順調に進んだが、車内二人の会話は一向に進まなかった。30分ほど経過した頃だったろうか、ぼくはトラックから降ろされた。運ちゃんはミネソタの荒野にぼく一人置き去りにしてそのまま行ってしまった。

「がんばれよ」

 その一言は今でも尻穴周辺にこびりついている。風と涙のウオシュレットじゃ全然落ちやしない。

 

 それでもぼくは、ぼくをやめない。