『人間仮免中』(2012 卯月妙子) SAN値を削る実録ラブコメ

人間仮免中

総合評価:★★★

悲しい:★★★

怖いもの見たさ:★★

感動:★★★★

 

図書館で見っけた。前にネットの記事でだれかが紹介していたのを思い出して手にとってみた。西原理恵子さんの絵以上に乱暴な絵柄。線とかぐちゃぐちゃなんだけど内容が凄絶すぎてそんなのどうでもよくなるっつーか読み手の頭の中にある常識をぶっ飛ばしにかかってくる、そんなマンガです。1ページ目からそんな感じだからね、読む人はどうか気をつけて。

 

あらすじ

夫の借金と自殺、自身の病気と自殺未遂、AV女優他さまざまな職を経験し、波乱に見た人生を送ってきた著者が36歳にして出逢った、25歳年上のボビー。二人仲良くケンカしながら生活してたんだけど医者に処方されてた薬の量を勝手に減らしちゃったためにとんでもない事故を引き起こし、生死をさまよう。顔面崩壊、失明の重症を負うも奇跡的に一命をとりとめた彼女は家族やボビーに支えられて回復し、これからも生きていく

 

「頭おかしい」の一例

明らかに普通の人とは違った、ブッ飛んだ人生を送らざるを得なくなった人に対して僕は憐憫と好奇心(野次馬根性)を覚えることがある。そんなヤバい人生を、本を通して垣間見ることができるって、豊かな経験だなぁと思う。

いわゆる「頭おかしい」人が頭おかしく見える言動をするのは病気のせいで、それを「頭おかしい」つって「家にこもってろ」とか叩くのは何だかとても悲しい。じゃあどんな人になら頭おかしいって言えばいいんだ?っていうと、頭おかしくないって自分が知ってる人が頭おかしいことをしていたら「お前頭おかしいw」って言えばいいと思う。それは笑いになる。

でも、病気でそういう行為をとっているのかもしれない人に対して頭おかしいって言うのは相手や周囲の人たちを傷つけてしまうおそれがある。っていうか「頭おかしい」って言葉を統合失調症患者やその世話をしている人が聞いたとき何て思うんだろうと考えると、僕はこの言葉を受け入れたくなくなる。となると笑いの文脈においても安易に使用して良いものか疑ってしまう。

こうした言葉に対する疑心暗鬼が積み重なって僕は高校3年生以降、人と笑いを共有することができなくなった。腹の底から笑えなくなった。目が死んだ。表情筋が動かせない。何かを注文するとき店員に「えっ?」って二度訊きされる。3人以上の会話で声が震える。まるで自分が自分じゃなくなったような感覚。実際夜中にふと目が覚めて起き上がり、洗面台の鏡に向かって「どちら様ですか?」って問うたことがある。気になって仕方ないからそのまま朝までずっと問うてた。認めたくないがあの頃の僕は頭おかしかったかもしれない。

 

カーテンを締め切った薄暗い部屋の中この文章を書いている僕は今年で30歳。馴染むことができない会社の同僚に中指を立て、使えない部下に対する気遣いスマイルを向けてくる上司に中指を立てきたソーシャル・ファッカーは果たしていつまで普通の人を演じられるだろうか。

 

天気の悪い日は空想世界が活気づく。 

ボールペンが笑いかけ、皿が靴の中を泳いでいく。モンキーレンチの幽霊に首を舐められて犬が驚いた猫が驚いた全米が泣いた。未来予測だって朝飯前。

あは、あはははは! うひゅひゅひゅフィッ!

シミが染み込むメカニズム!

ぶひゃひゃはldkl;jkがいぷふぁくふkl;j;kw

 

 

はい、カタルシスおしまい。

人間仮免中

人間仮免中